2006年12月05日

『パプリカ』

パプリカ

観てきました。

今敏作品は相変わらず密度が濃くってオイラ好みだ。
極彩色で細かい絵が次々にモーフィングしていく作画は、世紀の駄作『平成狸合戦ぽんぽこ』っぽいので観る前はやや不安だったのだが、今作品ではその点は然程気にならなかった。
前述の『平成狸合戦ぽんぽこ』の失敗でも解る通り、アニメの作画の場合は実写と違って描かれたものすべてに視点が分散し、さらにイメージを膨らませる程に画面に圧迫感が増するという皮肉付き。夢の世界という自由であるハズの空間が、非情に強迫染みた印象を濃くしていく。意識的に狙っているとしたら、『平成狸合戦ぽんぽこ』とは逆にかなり効果的だったと言わざるを得ない。まぁ、狙っているんだろうけどね。
ただし、夢が現実に入り込み、夢と現実の区別がつかなくなってくるという構図は、そもそもが実写ではない作画による画面であるため、驚きや恐怖感を煽れず、ややその視覚的効果は弱いように思われた。

パプリカ

精神医療総合研究所のセラピストである千葉敦子(林原めぐみ)が、超肥満巨漢の天才科学者の時田浩作(古谷徹)と共同開発した他人の夢に入り込み精神治療を行うDCミニを使い、密かに夢探偵パプリカという存在を装って治療をしていたが、何者かによってDCミニが盗み出され、悪用されて被害者が出ていく。所長の島寅太郎(掘勝之祐)、所員の小山内守雄(山寺宏一)と共に犯人を探すが、DCミニの開発に反対している理事長の乾精次郎(江守徹)がDCミニの開発中止を決断する…。

配役で筋が推察されってしまうの残念だが、お馴染みの腕の確かな声優たちばかりなので、その点安心して観ることができた。反面、やや新鮮さに欠けていた、というか声優の個性が勝ち過ぎている感があったとも言えるが…。
大好物なテーマと、贔屓にしている今敏監督作品とあって、少々期待過多であったことは否めないのだが、どうにもこの物足りなさは何だろう…。
決してスーパーヒロインものを期待していたワケではなかったハズなのだが、思った程パプリカが活躍しないとこが物足りない原因なのかなぁ? 原作はどうなっているのか知らないが、冒頭に押し込められているパプリカの活躍をもう少し長く描き、パプリカというキャラクターの魅了度を充分に上げておいてから、千葉敦子というキャラクターを登場させてくれたなら、そのギャップに一気に持っていかれたのではないかと残念に思う。

思想的・社会的テーマを提起しているにも関わらず、最終的に大ボス倒したら丸く治まる的な結末はいかがなものかと思われるし、深く思想・哲学的なことを考えさせるには、物象の波がそれをさせてくれない。『攻殻機動隊GHOST IN THE SHELL』にあるような沈黙時間が欲しかったように思われる。
そういう意味では、ちょっとテーマと表現が足の引っ張り合いをしているようにも感じられたかな。

監督の今敏と原作者である筒井康隆がペアで声優参加していたり、ラストシーンの映画館の看板がこれまでの今敏作品だったりというちょっとした記号も見逃せない。
そらから平沢進の音楽、これは文句なくすばらしかった。DVD買わなくてもサントラは買っちゃうかも。

総観としては……『東京ゴッドファーザーズ』の方が良かったなという感じ。